令和9年分から青色申告特別控除が75万円に!
適用要件と今から準備すべきこと
個人事業主・一人親方の皆さまへ ― タイムリミットは令和9年1月です ―
確定申告でおなじみの「青色申告特別控除」。令和8年度税制改正により、令和9年分の所得税から、最高額が65万円から75万円に引き上げられます。「10万円得をするのか、それはありがたい」――そう思われた方こそ、この記事を最後までお読みください。
というのも、今回の改正は何もしなくても自動的に控除が増える、という内容ではないからです。それどころか、準備をしないまま令和9年を迎えると、これまで55万円だった控除が10万円まで下がってしまう方が出てきます。差額は45万円。所得税・住民税・国民健康保険料まで含めれば、影響は決して小さくありません。
しかも、対応のタイムリミットは令和9年1月、その年の帳簿をつけ始める前です。確定申告の時期に気づいても、その年はもう間に合いません。今回は、何が変わり、今年(令和8年)のうちに何をしておけばよいのかを、順番に整理します。

令和9年分以後の青色申告特別控除は、次のようになります。
| 記帳方法 | 申告方法・追加要件 | 控除額 | 届出書 |
|---|---|---|---|
| 複式簿記 | ① e-Tax申告+② 優良な電子帳簿保存 | 75万円 | 必要 |
| 複式簿記 | ① e-Tax申告+③ 特定電子計算機処理システムによる電子取引データの保存(デジタルシームレス保存) | 75万円 | 必要 |
| 複式簿記 | ① e-Tax申告のみ | 65万円 | 不要 |
| 複式簿記 | 書面(紙)による申告 | 10万円 | 不要 |
| 簡易簿記 | 前々年分の事業所得・不動産所得に係る収入金額が1,000万円以下の場合に限る | 10万円 | 不要 |
この表で、まず目を留めていただきたいのは「55万円」という区分が消えていることです。従来は「複式簿記+書面申告」で55万円の控除が受けられましたが、これが廃止されます。e-Tax申告を要件に加えたうえで65万円に引き上げられる一方、紙のまま申告を続けると、複式簿記できちんと記帳していても控除は10万円。ここが今回の改正の最大の注意点です。
また、10万円控除(簡易簿記)についても、新たに収入金額の要件が設けられます。
今回の改正は、報道では「75万円に引上げ」と前向きに語られます。しかし実務の現場から見ると、本当に急ぐべきなのは、75万円を目指す方より、まだ紙で申告している方です。
この差は歴然です。「うちは今まで通りでいい」と考えている方ほど、実は一番大きな影響を受けます。まだe-Taxを使っていない方は、75万円の話は一旦置いておき、まず電子申告への切替えを最優先でご検討ください。
e-Tax申告に加えて、次の②か③のどちらかを満たすと75万円になります。
訂正・削除の履歴が残る形で帳簿を電子保存する方法です。ご自身の会計ソフトの設定だけで完結し、取引先の協力が要りません。現実的な選択肢は、ほぼこちらと考えてよいでしょう。
Peppol(デジタルインボイス)や銀行の決済データが、会計帳簿へ自動連携される仕組みが前提となります。取引先や金融機関側の対応状況に左右されるため、現時点で個人事業主の方が狙うには、まだ環境が整っていないケースが大半です。

ここが本記事で一番お伝えしたいところです。優良な電子帳簿は、その年の最初の記帳段階から一貫して要件を満たしている必要があります。年の途中からの切替えは認められません。
そして多くの会計ソフトでは、この設定ができるのはデータの新規作成時、または次年度への繰越時だけです。つまり、令和8年分から令和9年分へ繰り越す操作のときが、最後のチャンスになります。
「確定申告のときに顧問税理士に相談すればいい」――残念ながら、それでは手遅れです。令和10年3月に気づいても、令和9年分は75万円の適用を受けられません。
| ソフト区分 | 留意点 |
|---|---|
| 弥生会計(デスクトップ版) | 「優良な電子帳簿保存を行う」設定にすれば対応可能です。設定した年度は、仕訳・科目・部門の変更履歴がすべて自動保存されます。ただし、設定できるのはデータの新規作成時または次年度への繰越時のみで、年度の途中では変更できません。また、一度設定すると取り消せません。設定後は差分データの送受信ができなくなり、当事務所とのデータのやり取りは全データの送信・取込となります。なお、対象は[帳簿・伝票]メニューの機能に限られ、固定資産台帳等は対象外です。 |
| 手書き帳簿・Excel帳簿 | 訂正・削除の履歴が残らないため、要件を満たすことができません。e-Taxで申告しても控除額は65万円が上限となります。75万円を目指すのであれば、会計ソフトへの移行が必要です。 |
お使いのソフトが対応しているかどうかは、JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)の「電子帳簿ソフト法的要件認証」を取得しているかが目安になります。国税庁ホームページのJIIMA認証情報リストでもご確認いただけます。旧バージョンのままでは対応していないこともありますので、バージョンアップの要否も併せてご確認ください。
要件を満たしていても、届出書を出していなければ65万円までしか控除できません。令和9年分の確定申告期限(令和10年3月16日)までに、所轄税務署長へ提出してください。
この届出書は初年度に一度提出すれば足り、取りやめの届出書を出すまで効力が続きます。毎年提出する必要はありませんので、ご安心ください。
| 時期 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 令和8年中(今ここ) | 対応ルートの決定/会計ソフトの導入・確認 | ここでの準備が本番。年内に環境を整える |
| 令和9年1月 | 会計ソフトで優良な電子帳簿の設定をオンにして記帳開始 | 年の途中からは切替不可。ここを逃すと令和9年分は適用不可 |
| 令和9年12月 | 年間を通じて要件を満たしていたかを点検 | 決算作業と併せて確認 |
| 令和10年2月〜3月 | 届出書の提出/e-Taxによる確定申告 | 申告期限(3月16日)までに届出書を提出 |
ご覧のとおり、年内にやるべきことが実質的な勝負どころです。会計ソフトの導入や乗換えを伴う場合、操作に慣れる時間も必要になりますので、10月・11月のうちに動き出しておくと安心です。

① 紙で申告している方は、控除が55万円から10万円へ。まずe-Taxへの切替えを。
② 75万円を狙うなら、令和9年1月の記帳開始前に会計ソフトの設定をオンに。年の途中からは変更できません。
③ 令和10年3月16日までに届出書の提出を。忘れると65万円止まりです。
「自分はどのルートで、何をすればよいのか」――ここが分かりにくいのが今回の改正です。判断を誤ると1年分の控除額が変わってしまいますので、早めにご確認ください。
笠原会計事務所は、兵庫県尼崎市で平成15年の開業以来、阪神間の中小企業・個人事業主の皆さまを支援してまいりました。建設業の税務・許認可は累計100件超、相続支援は累計200件超、税務調査対応は累計100件超の実績があります(いずれも開業以来の累計)。
今回の改正について、次のようなご相談を承っています。
当事務所では、準備状況を確認するためのチェックリストもご用意しています。「今の自分の状況で何が足りないか」を一緒に整理しますので、お気軽にお声がけください。
税理士・行政書士 笠原会計事務所 TEL 06-6438-5450(受付 9:00〜12:00/13:00〜18:00 平日) 兵庫県尼崎市武庫町3-25-22/駐車場あり(作業車・トラックでもお越しいただけます) 対応エリア:尼崎・西宮・伊丹・宝塚・芦屋・川西・神戸・大阪市 |

※本記事は令和8年8月現在の法令等に基づいて作成しています。今後の政令・省令・様式の整備により、内容が変更となる場合があります。